米国で買収防衛策が認められる基準

コメンタリー「市場内買付けに対する買収防衛策とTOB」で触れたとおり、欧州は、買収者に対して、市場内外の取引を問わず概ね30%以上の支配権を取得する場合にはTOBを強制する一方、取締役会に対して、株主総会の承認のない買収防衛策を禁止し、米国は、買収者に対して、市場内外の取引を問わず株式の取得を認める一方、取締役会に対して、買収防衛策も認める。日本は、買収者に対して、市場「外」の取引で一定の場合にはTOBを強制する一方、取締役会に対して、買収防衛策を認めるものの、最終的には株主の判断を尊重する。買収防衛策が認められているという点では、日米は共通しているが、米国でも、取締役会が導入した買収防衛策が裁判で争われることが多い。では、どのような場合に買収防衛策が認められているか。

著名な判例は、1985年のUnocal事件である。この事件では、以下の条件が満たされた場合には、取締役会の買収防衛策が認められる。

①会社の政策または機能に対する危険が生じたと信じる合理的な理由(脅威)の存在(reasonableness test)

②買収防衛策がそうした脅威との関係で相当なものであること(相当性)(proportionality test)

②については、強圧的(coercive)でも排除的(preclusive)でもなく、かつ、相当性の範囲内(range of reasonableness)に収まるものとされている(1995年のUnitrin事件)。

ただし、株主の議決権行使を阻害することになる場合には、取締役会は、自己の行為について、やむにやまれる正当化事由(compelling justification)を立証しなければならない(1988年のBlasius事件)。

これらの基準は、友好的な買収における取引保護条項が認められる基準にもなっている(ただし、Blasius事件の基準は10年以上使われていない)。

東京機械の取締役会が導入した買収防衛策は、4割近い株式を保有していたアジアインベストメント等の議決権行使を阻害した場合であるが、やむにやまれる正当化事由が認められたともいえる。

日本も米国と同様、買収者に対して、市場「内」の株式取得を一定の場合を除き認めているため、取締役会に対して、買収防衛策を認める必要性が高い。日本は米国と異なり、最終的には株主の判断を尊重するため、米国と一概には比較はできないが、本件が米国で争われたら認められるか、考えてみるのは有益と思われる。

フィデューシャリーアドバイザーズ株式会社 吉村一男

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