※『会社法 第4版』は2023年3月31日に刊行しました。
詳細はこちら →

【『会社法 第3版』をご購入された方へ】
補 遺(PDF) →
正誤表(PDF) →

書籍紹介

会社法第3版表紙

会社法[第3版]

田中 亘[著]

A5判/880頁
本体3,800円+税
ISBN978-4-13-032394-9
2021年3月27日発売

初学者向けの基礎事項から実務家向けの最新トピックまで、会社法のすべてを解き明かした概説書。基本原則や制度趣旨など初歩から分かりやすく解説するとともに、実務上の運用や争点など実践的な知識も数多く提示する。3月施行の令和元年会社法改正に完全対応するほか、最新の動向を踏まえて更に充実の改訂第3版。

本書の特徴

基本原則や制度趣旨など初歩から丁寧に解説、基礎が身に付く
判例を中心に重要論点を広く取り上げ、分かりやすく詳述する
図表を多数掲げ制度の概要を整理、コラムも設け工夫を凝らす
簿記のルールなど会社法習得に不可欠な様々な知識を紹介する
実務上の運用や争点など実践的な論点も提示、ビジネスに最適

書籍情報・ご購入について(第4版) →

著者紹介

田中 亘(たなか わたる)

[略歴]

東京大学社会科学研究所教授

[著書]
『企業買収と防衛策』(商事法務、2012年)、『数字でわかる会社法』(編著、有斐閣、2013年)、『会社法 Visual Materials』(共著、有斐閣、2011年)、『事例で考える会社法[第2版]』(共著、有斐閣、2015年)、『日本の公開買付け』(共編、有斐閣、2016年)、『会社法[第4版]』(共著、有斐閣、2018年)、『論究会社法』(共編、有斐閣、2020年)、『Before / After 会社法改正』(共編、弘文堂、2021)、ほか多数。

はしがき

株主総会資料の電子提供、一定の会社への社外取締役選任の義務づけ、および株式交付制度の創設などを内容とする、令和元年会社法改正が行われ、令和3年3月1日から施行されることとなった(株主総会資料の電子提供制度については、改正法の公布後2年6月を超えない範囲で政令で定める日から施行)。第3版では、令和元年改正の他、第2版刊行後に出された重要判例や実務の展開を織り込むための改訂を行った。なお、令和元年改正法の一部は、本書刊行時点で未施行であるが、本書では、改正法を前提にした解説を行っている。

「はしがき」より

目 次

第1編 総 論

第1章 序説─会社と会社法

第1節 会社とは何か
第2節 株式会社─その基本構造、特徴および法の課題
第3節 持分会社
第4節 会社法の法源および構造

第2章 会社法総則

第1節 会社の基本概念
第2節 会社の営業所(本店・支店)および住所
第3節 会社の商号
第4節 会社の使用人
第5節 会社の登記
第6節 会社の公告
第7節 子会社・親会社ほか
第8節 会社訴訟・会社非訟

第2編 株式会社

第3章 株式と株主

第1節 株式と株主
第2節 株式の譲渡自由の原則および譲渡の制限
第3節 株式の譲渡・担保化と権利行使の方法
第4節 特殊な株式保有の形態
第5節 投資単位の調整

第4章 機 関

第1節 総 論
第2節 株主総会
第3節 取締役・取締役会
第4節 会計参与
第5節 監査役・監査役会
第6節 会計監査人
第7節 監査等委員会設置会社
第8節 指名委員会等設置会社
第9節 役員等の責任およびその追及等に関する法規制

第5章 計 算

第1節 総 説
第2節 会計帳簿・計算書類等
第3節 決算の手続
第4節 株主への分配
第5節 株主資本の項目間の計数の異動
第6節 株主等の調査権限

第6章 資金調達

第1節 総 説
第2節 募集株式の発行等
第3節 新株予約権
第4節 社 債

第7章 設 立

第1節 総 説
第2節 発起人
第3節 発起設立
第4節 募集設立
第5節 設立中の会社
第6節 設立に関する責任
第7節 設立の無効
第8節 会社の不成立

第8章 定款の変更

第1節 総 説
第2節 定款変更の手続

第9章 買収・結合・再編

第1節 買収・結合・再編の意義と方法
第2節 株式の取得による買収
第3節 組織再編─合併、会社分割、株式交換、株式移転および株式交付
第4節 事業の譲渡等
第5節 敵対的買収と防衛策

第10章 解散・清算・倒産

第1節 解 散
第2節 清算(通常清算)
第3節 倒 産

第3編 持分会社・国際会社法

第11章 持分会社・組織変更

第1節 持分会社
第2節 組織変更

第12章 外国会社・国際会社法

第1節 外国会社
第2節 国際会社法
第3節 外国会社に対する会社法の規律

書籍情報・ご購入について(第4版) →

内容見本

第1章 序説―会社と会社法

 会社法の解説を始めるに当たり,まず,会社とは何か,および,経済社会において会社がどのような地位を占めているかについて説明する(第1節)。次に,4種類の会社の中でもとりわけ重要であり,本書でもその紙幅の大半を割いて説明することになる株式会社について,その基本的な構造と特徴を説明したうえで,それに関する法の課題を述べる(第2節)。続いて,株式会社以外の会社(持分会社)の特徴を簡単に述べる(第3節)。最後に,会社に関する法制の構造や歴史について解説する(第4節)。

第1節 会社とは何か

■1 会社の意義

 会社とは,営利を目的とする社団法人のことである。社団法人とは,人の集まり(団体)に対して法人格が付与された存在のことである(団体を構成する人を構成員という)。また,営利とは,事業活動によって利益を上げ,それを構成員に分配することをいう(以上の定義について詳しくは,⇨31頁第1節)。
現行法上,会社には,株式会社合名会社合資会社および合同会社という4種のものが存在する(会社2条1号。以下,会社法の条文は原則として条文番号のみで引用する)。後3社を総称して持分会社という(575条)。株式会社には株主,持分会社には社員という構成員がおり(⇨コラム1-1),株主は,主として剰余金の配当(105条1項1号・453条),社員は主として利益の配当(621条)という形で,会社が事業活動によって得た利益の分配にあずかることになる。

コラム1-1 ●日常用語としての「社員」―会社における従業員の地位

 わが国では,「社員」というと会社の従業員を指すことが多い。しかし,法律上は,従業員(会社法は,伝統的に使用人と呼んでいる。第一編第三章第一節[10条以下]参照)は,会社の社員つまり構成員ではなく,会社との間で契約(労働契約)を結んだ者の1人にすぎない。その点では,会社の取引先や会社に貸付をしている金融機関などと変わりがない。

・・・・・

■2 営利企業の代表としての会社―特に株式会社

 会社は,営利企業の形態として最も広く利用されている組織である(企業とは,法律用語というより,日常用語または経済用語であるが,商法学では,継続的・組織的に事業活動を行う経済主体,というように定義されることが多い)。ことに,株式会社の経済社会における重要性は圧倒的なものがある。読者のよく知る日本の大企業は,ほぼ例外なく,株式会社の形態をとっている。中小企業は,個人企業(法人形態をとらず,個人で事業を営む者)など,他の組織形態のものも多いが,やはり株式会社の比重が大きい(⇨コラム1-2)。

コラム1-2 ●経済社会の中の会社

 平成30年度分の税務統計によれば,株式会社の数は253万9,808社(特例有会社[⇨29頁コラム1-11]を含む)であり,全法人数の実に93.3%を占める。合名会社,合資会社,合同会社の数は,それぞれ3,369社,14,165社,98,440社である。ちなみに,会社以外の法人(一般社団法人・一般財団法人等)は,67,760社ある(国税庁(2020)168頁第11表その1)。
株式会社のうち,上場会社,すなわち,その発行する株式が東京証券取引所等の金融商品取引所(金商2条16項)の開設する市場で取引されている会社は,令和2年5月末現在で3,819社ある(大和総研(2020)1頁)。国際的に見ると,わが国の大企業は,上場する傾向が強いことが知られている。わが国の売上高上位の企業500社のうち,約7割は上場会社である(宮島(2013)25頁)。

・・・・・

第4章 機 関

・・・・・

□3 役員等賠償責任保険契約(D&O保険)

(1)意 義

 役員等賠償責任保険契約とは,株式会社が,保険者との間で締結する保険契約のうち,役員等(会社法423条1項)がその職務の執行に関し責任を負うことまたは当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が填補することを約するものであって,役員等を被保険者とするもの(保険契約の締結により職務執行の適正を害するおそれがないものとして法務省令[会則115条の2]で定めるものを除く)をいう(会社法430条の3第1項⇨図表4-23(2))。実務上は,D&O保険(Directors and officers liability insurance)と呼ぶことが多い(山下(2005),D&O保険実務研究会(2017))。
補償契約(⇨378頁□2)では,役員等が負担する費用や損失の補償は,会社自身によって行われるのに対し,D&O保険では,保険者によって行われる。また,補償契約が,会社と役員等との間で締結されるのに対し,D&O保険は,保険者(損害保険会社)が契約当事者になるため,不合理な内容の契約が締結されることには自ずと歯止めがかかるだろう(一方的に役員等に有利な内容の保険は,保険者が引き受けないだろう)。そこで,会社法は,D&O保険については,補償契約のような契約内容に関する規制(⇨379頁(a))を特に課すことなく,会社が締結することを許容している。それゆえ,責任追及を受けたことで負担する防御費用のほか,役員等が対第三者責任や対会社責任を負担することによる損失も,D&O保険の付保対象にできる。D&O保険は,上場会社を中心に,広く普及している。

(2)契約締結時の規制

 もっとも,D&O保険は,会社による保険料負担により,役員等が損害の填補を受けることになる点で,利益相反性を否定できず,また,内容しだいでは,役員等の職務執行の適正に影響を与えるおそれもある。そこで,会社法は,会社が役員等賠償責任保険を締結するには,取締役会設置会社では取締役会の決議,非取締役会設置会社では株主総会の決議により,契約内容を決定しなければならないものとしている(430条の3第1項。399条の13第5項13号・416条4項15号も参照)。
他方,利益相反取引に関する規制(356条の2は,役員等賠償責任契約には適用されない[430条の3第2項。同条3項により,民108条も不適用]),たとえば,任務懈怠の推定(会社法423条3項)は,役員等賠償責任保険契約には及ばない。

関連書籍

民法1第4版 民法2第3版 民法3第4版 民法4補訂版 改正民法のはなし 詳解労働法第3版 競争法ガイド国際法第2版 国際租税法第4版 EBPMの経済学